科学的観点から見たギャンブル依存症

「ギャンブル依存症」と聞くと、「意志が弱い人なんだな」「気合いでなんとかやめられないのかな」といったように、「性格」や「精神的な弱さ」をイメージされる方が多いかもしれません。

もちろん性格的な面も依存症には影響がありますが、ギャンブル依存症では脳機能に障害が出てしまっていることが、多くの研究によって判明しているのです。

ギャンブル依存症になっている人は、健常者と比較して脳の「前頭前野」の機能が低下しているケースが多く見られます。

「前頭前野」はヒトと猿を分ける領域と言われており、人間は前頭前野が発達しているために、動物とは違って「理性」を持って己の行動を制御できるのです。

まず、海外の研究(Potenzaら、de Ruiterらが行った実験)により、ギャンブル依存症の人は、ひと呼吸おいて考えなければいけない場面でも、勢いのまま間違った行動をとってしまいがちだということが分かりました。

前頭前野では「衝動を抑える機能」を司っているのですが、ギャンブル依存症の人はその機能が正常に働いていないということが分かります。

また、京都大学の高橋英彦教授によって、「ギャンブル依存症の患者は、状況を理解し柔軟にリスクに対する態度を変化させる能力に障害がある」と報告されています。

リスクを避けて安全にいった方がよい場面でも、ギャンブル依存症になっている人は過剰にリスクを取ろうとしてしまうのです。

高橋教授は行動の観察だけではなく、「fMRI」を使用して実験中の脳の活動量も合わせて測定しました。

その結果、ギャンブルへの依存度が強い人ほど前頭前野の機能が低下しており、脳同士のネットワークも弱くなっていることが明らかとなったのです。

これらの実験から、ギャンブル依存は脳機能に障害が出てしまっている、「病気」ということが分かると思います。

例えば、家族に「体調がずっと良くならない」「頭痛がひどい」という人がいたら、病院の受診、治療を進めますよね。

同じく、ギャンブル依存症も「病気」になりますので、症状を改善するためには、きちんとした専門的な治療を受ける必要があるのです。

海外では、薬物依存の患者の脳を、電気刺激で活性化することにより欲求を抑えることに成功した事例があります。

現在のギャンブル依存の治療としては、心理療法(認知行動療法)がメインとなっていますが、将来的には脳へのアプローチも治療として取り入れられていくかもしれません。